特例子会社とは
障害者が就職や転職をする場合に、選択肢の1つとして出てくるのが特例子会社です。
特例子会社とは、簡単にいうと、障害者をたくさん雇うために作られた会社のことです。
障害者専門の会社といってもよいでしょう。
平成30年6月時点で、全国に486社あります。
障害者を雇うための会社なので、一般企業と比べると、障害に対する配慮は多いし、障害に対する偏見もありません。
障害者の雇用に特別な配慮をし、一定の要件を満たしたうえで、厚生労働大臣の許可を受けて、障害者雇用率の算定において親会社の一事業所とみなされる子会社のこと。フリー百科事典Wikipedia
会社は、従業員を雇う時に、一定の割合で障害者を雇わなければならないという法律があります。
たくさん社員がいる大きな会社は、そのぶん、たくさんの障害者を雇う必要が出てくるわけですね。
しかし、障害者の中には、障害がない人と同じように仕事ができない場合もあります。
そこで、一定の要件のもとに子会社を作り、その子会社で雇った障害者は、親会社が雇ったことと同じことにしてよいということになっているのです。
特例子会社では、障害者と健常者が同じ場所で働きます。
障害者と健常者の人数の割合は、会社によって異なります。
健常者が障害者をサポートしながら仕事をする場合もありますし、
障害者がリーダーや上司になって、障害者同士で仕事をする場合もあります。
業務の内容も、簡単な軽作業をやる会社もありますし、専門的なスキルが必要な仕事をする会社もあります。
同じ会社内でも、複数の部署があって、能力や特性によって業務内容を選べる場合もあります。
特例子会社といっても、それぞれの会社によってかなり違いがあります。
オープンとクローズ
障害者が働く会社を探すとき、または、面接を受けるときに、
自分が障害を持っていることを会社に伝えるか、伝えないかというのは大事な問題です。
会社側に障害があると伝えて、面接を受けることを「オープン」
会社側に障害があることを伝えないで、面接を受けることを「クローズ」
といいます。
面接や就職の際に、会社に「自分が障害者である」ということを、会社に伝えなくてはいけないということはありません。
しかし、障害に対する配慮が必要な場合は、あらかじめ会社に障害の内容や程度を伝えておいた方が良いです。
障害のある社員に対して、十分な配慮ができるかどうかは会社によって異なります。
入社した後に、会社に配慮をして欲しいと希望しても、会社が対応できるかどうかは分かりません。
何も配慮は必要ないというのであれば、クローズで面接しても良いですが、
入社後に配慮が必要であったり、不安があるのであれば、オープンで面接を受けた方が良いでしょう。
一般企業か特例子会社か
特例子会社の面接を受けるときは、オープンで受ける方が有利です。
なぜなら、特例子会社は障害者を採用したい会社だから。
障害者を採用することを前提に、募集、面接をしています。
また、一般企業の障害者採用枠も、オープンで応募するのが前提です。
どちらも、障害者手帳を持っていることが応募の条件になっていることが多いです。
逆に、障害者としてではなく、または、障害者ということを知られずに就職したい場合は、一般企業を受けることになります。
もちろん、特例子会社にクローズで応募することも可能です。
しかし、指導員であったり、障害者をサポートする職種で募集していることが多いので、経験がないと狭き門になることでしょう。
特例子会社のメリットとデメリット
メリット
- 障害に対する配慮が受けやすい
- 職場環境や業務内容の変化が少ない
- 障害があることを隠さなくてよい
1番のメリットは、やはり障害に対する配慮が受けやすいことです。
何か困ったことがあった時に、相談する体制ができていたり、
定期通院する時に、有給休暇を使わずにすんだり、
仕事内容も特性によって配慮してもらえることが多いです。
また、本人の希望しない異動は少なく、
業務内容や上司が急に変わることは少ないです。
また、業務量も本人の状態に応じて調整してくれることが多いです。
職場環境の変化は大きなストレスになることがあります。
そのようなストレスが生まれにくいことは、障害者にとってはメリットです。
そして、どのような障害を持っているかを会社側が把握してくれていて、
同じような障害を持った仲間が多いので、会社で障害があることを隠す必要がありません。
周りから見てほとんど分からない精神障害者の場合、同僚や上司に病気のことを隠しながら仕事を続けることは予想以上に大変です。
デメリット
- 業務内容が限られていることが多い
- 給与水準が低いことが多い
- 一般企業に転職する時に、クローズで受けてもバレやすい
特例子会社は、障害者に安定して長く勤めてもらいたいと思っています。
そのため、業務内容を固定化したり、負荷をかけすぎないように少なくしたりという配慮をしています。
ずっと同じことばかりするのは嫌だという方や、内容的にも業務量的にも新たにチャレンジしていきたいという方には、
少し物足りないと思う場面もあるかもしれません。
もちろん、その会社との話し合いの中で、新たな業務をチャレンジさせてくれる特例子会社もたくさんあります。
特例子会社では軽作業を担当する場合が多いので、
求人票などの給与金額を見ると、一般企業よりも低く感じる場合が多いです。
特例子会社によって業務内容も様々なので、スキルがあれば、一般企業と同じくらいの給与をもらえる場合もあります。
一度、特例子会社に就職して働いて、そのあとに、一般企業に転職しようとする場合、
障害者であることを隠して転職するのは難しい場合が多いです。
履歴書やエントリーシートの職歴に会社名を書きますが、
特例子会社は、特例子会社であることを公表しているので、
会社名を調べれば、特例子会社であることが人事担当者なら分かります。
前の会社でどのような仕事をしていたのか、どんな働き方をしていたのかを面接で聞かれれば、
障害者枠で採用されていたことを隠すのは難しいでしょう。
もちろん、前の職歴や障害のことを気にせずに採用してくれる会社もあると思いますが、
自分が障害者である、または、以前障害者であったということを相手に知られる前提でいた方がよいと思います。
特例子会社の面接について
特例子会社の面接ってどうやって受けるの
特例子会社の面接を受けるには、大きく分けて3つの方法があります。
- 合同面接会などで面接を受ける
- ハローワークやホームページで求人を見つけて、履歴書やエントリーシートで応募する
- 特別支援学校で実習後に、面接を受ける
合同面接会で面接を受ける
都や県や市などの地方自治体が、障害者のための合同面接会を年に数回おこなっています。
また、民間の転職支援企業が障害者求人をしている企業を集めて、
こちらも、年に数回、合同面接会をおこなっています。
どちらの合同面接会も、会社の採用担当者に直接会って話ができることが魅力です。
履歴書などの必要書類の準備をする必要はありますが、
書類選考で落とされずに、面接をしてもらえるので、
会社に聞きたいことがあったり、会社の雰囲気を知るにはよい機会です。
ハローワークやホームページで求人を見つけて応募する
これは、特例子会社に限らない一般的な面接の方法です。
必要書類を送って、会社が書類選考をして会って話を聞いてみたいと思ったら、面接の連絡をくれる。
事前に決められた日時に、会社に行って面接を受ける。
応募書類を送ったら必ず面接を受けることができるわけではないのが、合同面接会とちがうところです。
特別支援学校で実習後に面接を受ける
これは特別支援学校に在籍している生徒さんだけの方法です。
特例子会社では、特別支援学校の生徒さんの職場実習を受け入れている会社が多いです。
2年生や3年生の時に職場実習として、いくつかの会社に行き、
3年生の時に、相性が良かった会社の面接を受けるというものです。
特例子会社のまとめ
特例子会社にもいろいろあります。
あなたに合う特例子会社もあれば、合わない特例子会社もあるでしょう。
特例子会社がどのようなものかを知ることは大切ですが、
それ以上に、あなたが受けようとする特例子会社がどのような会社なのかを知ることの方が大切です。
障害者であっても、障害者でなくても、自分が働く会社のことを調べるのは重要なことです。
ぜひ、自分の得意なところ、不得意なところをよく知り、自分にあった会社を見つけてください。